働きながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」への対応は、企業にとって重要な課題になっています。
「介護休業制度はあるので大丈夫」
「介護は従業員それぞれの家庭の問題」
と考えている企業もあるかもしれません。
しかし、仕事と介護の両立が難しくなると、遅刻・早退や欠勤だけでなく、心身の疲労による生産性低下、さらには介護離職につながる可能性があります。
企業には、介護休業・介護休暇などの制度を整えるだけではなく、従業員が介護に直面しても働き続けられる環境をつくることが重要です。
また、仕事と介護の両立支援に取り組む企業が活用できる国や自治体の助成金・奨励金などもあります。
この記事では、ビジネスケアラー支援に関係する企業制度や助成金、企業が取り組む際のポイントについて分かりやすく解説します。
目次
ビジネスケアラー支援では「企業制度」と「助成金」を分けて考える
仕事と介護の両立支援について考える際、「企業制度」と「助成金」を混同しないことが大切です。
大きく分けると、次のように整理できます。
| 種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 法律に基づく制度 | 介護休業、介護休暇、所定外労働の制限など |
| 企業独自の支援制度 | 柔軟な働き方、相談窓口、研修、独自の休暇など |
| 国の助成金 | 仕事と介護の両立支援などに取り組む企業を支援する制度 |
| 自治体の助成金・奨励金 | 自治体が独自に実施する企業向け支援 |
企業に必要なのは、単に助成金を申請することではありません。
まず従業員が仕事と介護を両立できる環境を整え、その取り組みに利用できる助成金等があれば活用する、という順番で考えることが重要です。
ビジネスケアラーが利用できる主な企業制度
仕事と介護の両立を支援する制度には、育児・介護休業法に基づくものがあります。
代表的な制度を理解しておきましょう。
介護休業
介護休業は、対象となる家族を介護するために一定期間仕事を休むことができる制度です。
ただし、介護休業を「従業員自身が長期間介護するための休み」とだけ考えないことが重要です。
例えば、
- 要介護認定の手続きを進める
- ケアマネジャーへ相談する
- 介護サービスを決める
- 施設を検討する
- 家族の役割分担を決める
など、仕事と介護を両立するための体制を整える期間として活用する考え方があります。
介護休暇
通院への付き添いや介護サービスに関する手続きなど、介護に必要な対応を行うために利用できる制度です。
介護では、長期間仕事を休む必要はなくても、数時間や1日単位で対応しなければならないことがあります。
こうした場面で活用できる制度を従業員が知っておくことが重要です。
柔軟な働き方
仕事と介護を両立するためには、休業や休暇だけでなく、働き方を調整するという考え方も重要です。
企業では法令上必要な措置への対応に加え、自社の状況に応じて、
- 短時間勤務
- フレックスタイム
- 時差出勤
- テレワーク
などを組み合わせる方法があります。
介護の状況は従業員ごとに異なるため、「介護なら休業」という一つの方法だけではなく、働き続けるための選択肢を増やすことが重要です。
制度を整えるだけではビジネスケアラー支援にならない
企業に制度があっても、従業員が知らなかったり、利用しにくかったりすれば十分に機能しません。
従業員への情報提供
従業員自身が、
「介護休業という制度があることを知らなかった」
「介護休暇をどのようなときに使えるのか分からない」
という状態では、制度利用につながりません。
介護に直面してから説明するだけではなく、介護が始まる前から仕事と介護の両立について情報提供することが大切です。
管理職への研修
部下から介護について相談を受ける可能性がある管理職にも、基本的な知識が必要です。
管理職がすべての介護制度を詳しく理解する必要はありません。
重要なのは、
相談を受け止める → 必要な社内制度を案内する → 人事や相談窓口につなぐ
という対応ができることです。
相談できる環境づくり
介護は家庭の問題であるため、会社へ相談することをためらう従業員もいます。
そのため、
- 人事・総務
- 社内相談窓口
- 外部相談窓口
- 専門家
など、相談できる場所を明確にしておくことが重要です。
ビジネスケアラー支援に活用できる国の助成金
仕事と介護の両立支援に取り組む企業について、国が設けている助成制度があります。
代表的なものの一つが、仕事と家庭生活の両立を支援する事業主を対象とした両立支援等助成金です。
介護に関する一定の取り組みについても、所定の要件を満たすことで助成対象となる場合があります。
ただし、
- 対象となる企業
- 必要な取り組み
- 対象となる従業員
- 申請期限
- 必要書類
- 支給要件
などが定められています。
「介護休業を取得した従業員がいるから自動的にもらえる」というものではありません。
また、助成制度は年度によって内容が変更される場合があるため、申請を検討するときには最新情報を確認することが重要です。
自治体独自の助成金・奨励金を利用できる場合もある
国の助成金だけでなく、都道府県や市区町村が独自に仕事と介護の両立支援に関する助成金・奨励金を設けている場合があります。
例えば、
- 介護休業の取得促進
- 仕事と介護の両立環境整備
- 従業員への研修
- 相談体制の整備
- 柔軟な働き方の導入
などを支援する制度が設けられることがあります。
ただし、自治体の制度は地域や年度によって内容が大きく異なります。
本社所在地や事業所所在地によって対象になる制度が異なる場合もあるため、国の制度だけでなく、所在地の自治体の制度についても確認することをおすすめします。
助成金ありきでビジネスケアラー対策を考えない
助成金を活用できれば、企業が仕事と介護の両立支援を進めるうえで大きな後押しになります。
しかし、
「助成金があるから制度をつくる」
という順番だけで考えることはおすすめできません。
最初に確認すべきなのは、自社の課題です。
例えば、
- 介護をしている従業員がどの程度いるのか
- 従業員は会社の制度を知っているのか
- 管理職は相談を受けたとき対応できるのか
- 相談窓口が利用されているのか
- 介護による生産性低下が起きていないか
- 介護離職のリスクがないか
などを確認します。
そのうえで必要な施策を決め、活用できる助成金・奨励金がないか確認することが重要です。
ビジネスケアラー支援を進める5つのステップ
企業が仕事と介護の両立支援を進める場合、次のような流れで整理すると分かりやすくなります。
STEP1 自社の現状を把握する
従業員アンケートなどを活用し、現在介護をしている従業員だけでなく、将来の介護に不安を感じている従業員についても把握します。
STEP2 現在の企業制度を確認する
就業規則や介護休業・介護休暇、柔軟な働き方、相談窓口など、現在利用できる制度を整理します。
STEP3 不足している支援を整える
自社の課題に応じて、
- 介護リテラシー研修
- 管理職研修
- 相談窓口
- 柔軟な働き方
- 制度の周知
などを検討します。
STEP4 利用できる助成金等を確認する
実施する取り組みが決まったら、国や自治体の助成金・奨励金を確認します。
助成金によっては、取り組みを開始する前の準備や手続きが必要になる場合があります。
そのため、実施後ではなく計画段階で確認することが重要です。
STEP5 制度を「使える状態」にする
制度をつくって終わりではありません。
従業員への周知や研修、管理職への教育などを行い、
知っている → 相談できる → 利用できる
状態をつくることが重要です。
助成金・企業制度は「介護離職を防ぐ仕組み」として考える
助成金を受給すること自体が、ビジネスケアラー対策の目的ではありません。
最終的な目的は、
介護に直面しても従業員が仕事を続けられる会社をつくること
です。
介護休業や介護休暇などの制度、柔軟な働き方、研修、相談窓口を組み合わせることで、従業員が一人で介護を抱え込むことを防ぎます。
さらに、利用できる助成金・奨励金を活用することで、企業側の負担を抑えながら取り組みを進められる可能性があります。
助成金を「目的」にするのではなく、仕事と介護を両立できる職場づくりを進めるための手段の一つとして活用することが大切です。
FAQ
Q1. ビジネスケアラー支援に利用できる助成金はありますか?
仕事と介護の両立支援に取り組む企業を対象とした国の助成制度や、自治体独自の助成金・奨励金などがあります。ただし、企業規模や取り組み内容、従業員の制度利用状況などによって対象要件が異なります。
Q2. 介護休業を取得した従業員がいれば助成金を受け取れますか?
介護休業を取得しただけで自動的に助成金が支給されるわけではありません。対象となる取り組みや就業規則、申請期限など、各制度が定める要件を満たす必要があります。
Q3. 国と自治体の助成金を両方利用できますか?
制度によって異なります。同じ取り組みに対する重複受給ができない場合などもあるため、それぞれの支給要件を確認する必要があります。
Q4. 助成金は取り組みを実施した後に探しても間に合いますか?
制度によっては事前の計画や手続きなどが必要となる場合があります。そのため、仕事と介護の両立支援策を検討する段階で、利用できる助成金・奨励金について確認しておくことをおすすめします。
Q5. 企業のビジネスケアラー対策は何から始めればよいですか?
まず自社の従業員の状況と既存制度を確認することから始めましょう。そのうえで、研修、相談体制、柔軟な働き方など必要な施策を検討し、利用できる助成金等がないか確認する流れがおすすめです。
まとめ
ビジネスケアラー支援では、介護休業や介護休暇などの企業制度を整えるだけでなく、従業員が実際に利用できる環境をつくることが重要です。
そのためには、
自社の状況を把握する
必要な企業制度を整える
管理職・従業員の介護リテラシーを高める
相談しやすい環境をつくる
利用できる助成金・奨励金を確認する
という流れで考えることが大切です。
国や自治体の助成金等を活用することで、企業の負担を抑えながら仕事と介護の両立支援を進められる可能性があります。
ただし、助成金を受け取ることが目的ではありません。
「介護に直面しても従業員が働き続けられる会社をつくる」
ことを目的に、そのための手段として企業制度や助成金を活用していきましょう。
ビジネスケアラー対策、助成金も含めて見直してみませんか?
「介護休業制度はあるが、それ以外に何をすればよいか分からない」
「仕事と介護の両立支援に使える助成金があるのか知りたい」
「管理職・従業員への研修を検討している」
「自社に合ったビジネスケアラー対策を整理したい」
このような企業も少なくありません。
株式会社ハンドレッドライフでは、
現状把握・介護リテラシー向上・管理職研修・仕事と介護の両立支援・相談体制づくり・活用できる制度の整理
など、企業の状況に合わせたビジネスケアラー対策を支援しています。
助成金ありきではなく、自社に必要な対策を整理したうえで、活用できる制度も確認する。
仕事と介護を両立できる職場づくりを進めたい企業様は、お気軽にご相談ください。
