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ビジネスケアラー支援とは?企業が取り組むべき具体策と進め方

ビジネスケアラー支援とは?企業が取り組むべき具体策と進め方

働きながら親など家族の介護を担う「ビジネスケアラー」が増える中、仕事と介護の両立支援は企業にとって重要な課題になっています。

介護は育児と異なり、いつ始まるのか予測しにくく、期間や負担の大きさも人によって異なります。

従業員が介護について会社へ相談しないまま一人で抱え込むと、心身の疲労や仕事のパフォーマンス低下、欠勤・休職、さらには介護離職につながる可能性があります。

経済産業省は、仕事をしながら家族を介護する人が2030年には約318万人となり、介護に伴う労働生産性低下などによる経済損失を約9兆円と試算しています。仕事と介護の両立支援は、従業員への福利厚生だけでなく、人材確保や生産性、企業経営にも関係する課題と位置付けられています。

さらに2025年4月からは、改正育児・介護休業法により、介護離職防止に向けた雇用環境整備、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認、40歳等の従業員への早期の情報提供などが事業主に義務付けられています。

では、企業はビジネスケアラーをどのように支援すればよいのでしょうか。

本記事では、ビジネスケアラー支援が必要な理由から、企業が取り組むべき具体策、支援を進めるためのステップまで分かりやすく解説します。

目次

1.ビジネスケアラー支援とは

1-1.ビジネスケアラーとは

ビジネスケアラーとは、一般的に仕事を続けながら家族の介護を担っている人を指します。

例えば、

  • 高齢の親を介護している
  • 別居している親の通院に付き添っている
  • 介護サービスの手続きをしている
  • 認知症の親を見守っている
  • 施設やケアマネジャーとの連絡・調整をしている

といった従業員も含まれます。

「身体介護をしている人」だけがビジネスケアラーではありません。

離れて暮らす親の生活を支えたり、家族との調整や手続きを担ったりすることでも、時間的・精神的な負担が大きくなる場合があります。

1-2.ビジネスケアラー支援とは

ビジネスケアラー支援とは、従業員が介護を理由に仕事を諦めることなく、仕事と介護を両立できるよう企業が支援する取り組みです。

単に介護休業制度を整備するだけではありません。

重要なのは、

介護について知る

早い段階で会社へ相談できる

必要な制度・外部サービスを知る

働き方を調整する

仕事を続けながら介護できる

という環境をつくることです。

2.なぜ企業にビジネスケアラー支援が必要なのか

2-1.介護は突然始まることがある

親が元気に暮らしていても、

「転倒して入院した」

「認知症の症状が出てきた」

「突然、要介護状態になった」

といったことをきっかけに介護が始まる場合があります。

準備をしていなければ、従業員は仕事を続けながら、

  • 病院への付き添い
  • 要介護認定の申請
  • ケアマネジャー探し
  • 介護サービスの検討
  • 家族との役割分担
  • 施設探し
  • 費用の確認

などを短期間で進めることになります。

介護が始まってから初めて情報を集めるのでは、本人の負担が非常に大きくなります。

そのため、企業側も介護が始まる前から情報を提供しておくことが重要です。

2-2.介護離職だけが問題ではない

ビジネスケアラー対策というと、「介護離職を防ぐこと」に目が向きがちです。

しかし、実際には離職する前からさまざまな問題が起きる可能性があります。

例えば、

  • 睡眠不足
  • 疲労
  • ストレス
  • 遅刻・早退
  • 突発的な休み
  • 集中力低下
  • 仕事の能率低下

などです。

会社には出勤しているものの、介護による疲労や心配事によって本来の能力を十分に発揮できない状態が続けば、生産性にも影響します。

したがって企業は、「離職した人数」だけではなく、「介護によって働きにくくなっている従業員がいないか」にも目を向ける必要があります。

2-3.管理職や中核人材が介護を抱える可能性もある

親の介護問題が起きやすい40代・50代は、企業では管理職や専門職、中核人材として活躍していることも多い年代です。

その従業員が介護によって十分に働けなくなったり離職したりすれば、

  • 業務ノウハウの喪失
  • 周囲の従業員への負担増加
  • 採用・育成コストの増加
  • 組織運営への影響

など、企業側にも大きな影響が生じる可能性があります。

ビジネスケアラー支援は、福利厚生というだけではなく、人材リスクへの対応でもあります。

3.2025年改正で企業に求められている介護離職防止策

2025年4月から、改正育児・介護休業法により企業の対応が強化されました。

3-1.介護離職防止のための雇用環境整備

事業主は、介護休業や両立支援制度を利用しやすくするため、研修の実施、相談体制の整備、利用事例の収集・提供、利用促進方針の周知などの中から必要な措置を講じることが求められています。

つまり、

「制度は就業規則に書いてあります」

だけでは十分ではありません。

従業員が制度を知り、相談でき、実際に利用できる環境をつくることが必要です。

3-2.介護に直面した従業員への個別周知・意向確認

従業員から「家族の介護に直面した」と申出があった場合、企業は介護休業や両立支援制度、申出先、介護休業給付金などについて個別に周知し、制度を利用する意向を確認する必要があります。

大切なのは、介護について相談してきた従業員に対して、

「休業するか、辞めるか」

という二者択一にしないことです。

仕事を続けながら介護できる方法を、一緒に考えることが重要です。

3-3.40歳等での早期情報提供

介護が始まってからではなく、介護に直面する前の早い段階で両立支援制度などを知らせることも事業主の義務となっています。

情報提供の時期は、原則として従業員が40歳に達する年度、または40歳の誕生日から1年間のいずれかです。

このタイミングで、

「親が元気なうちに何を確認しておけばよいか」

「介護が始まったらどこへ相談すればよいか」

「会社にはどのような制度があるか」

なども伝えておけば、実際に介護が始まった際の混乱を減らすことができます。

4.企業が取り組むべきビジネスケアラー支援の具体策

4-1.従業員の介護実態を把握する

最初に行いたいのが、自社の状況把握です。

例えば従業員アンケートで、

  • 現在家族を介護しているか
  • 今後数年以内に介護の可能性があるか
  • 仕事と介護の両立に不安があるか
  • 社内制度を知っているか
  • 会社へ相談できると思うか
  • どのような支援を求めているか

などを確認します。

「介護休業を取得している人がいないから問題ない」とは限りません。

会社に伝えずに介護している従業員がいる可能性もあります。

まずは、見えていない介護課題を見える化することが第一歩です。

4-2.介護リテラシーを高める

ビジネスケアラー支援では、制度をつくるだけでなく、従業員自身が介護について基本的な知識を持つことも重要です。

研修やセミナーでは、

  • 介護保険制度
  • 要介護認定
  • 地域包括支援センター
  • ケアマネジャー
  • 介護サービス
  • 介護休業・介護休暇
  • 仕事と介護を両立する考え方

などを伝えます。

介護が始まる前から基本的な知識を持っていれば、突然親の介護が必要になった際にも対応しやすくなります。

4-3.相談できる環境をつくる

制度が整っていても、

「誰に相談すればよいか分からない」

「介護していることを会社に言いにくい」

という状況では利用されません。

そこで、

  • 社内相談窓口
  • 人事・総務担当者
  • 外部相談窓口
  • 専門家相談

など、相談先を明確にします。

また、相談内容が本人の不利益につながらないという安心感も重要です。

4-4.管理職への研修を行う

従業員が最初に介護について話す相手が、直属の上司であるケースもあります。

しかし管理職が介護制度について知らなければ、

「仕事と両立できないのでは」

「休職した方がよいのでは」

など、本人が望んでいない方向へ話が進んでしまう可能性があります。

管理職には、

  • ビジネスケアラーへの理解
  • 社内制度
  • 相談を受けた際の対応
  • 人事部門へのつなぎ方
  • プライバシーへの配慮

などを学んでもらうことが重要です。

厚生労働省も、企業が仕事と介護の両立支援を進める際の取組として、実態把握、制度設計、介護前・介護中の支援、働き方改革などを示しています。

4-5.柔軟な働き方を整える

介護では、

「毎日介護する」

だけでなく、

「月に数回通院に付き添う」

「ケアマネジャーとの打ち合わせがある」

「突然親から連絡が来る」

など、さまざまな状況があります。

そのため、

  • 時差出勤
  • 短時間勤務
  • テレワーク
  • 時間単位の休暇
  • 業務量の調整

などを組み合わせ、仕事を継続できる環境を検討することが重要です。

制度の利用を促すだけではなく、介護しながら働き続けることを前提に支援することがポイントです。

4-6.介護のお金に関する情報も提供する

介護をする従業員が抱える悩みは、時間や体力だけではありません。

「親の施設費を払えるだろうか」

「自分が生活費を援助しなければならない」

「介護でどれくらいお金がかかるか分からない」

など、経済的な不安を抱える場合があります。

家族の状況によっては、

  • 税制上の扶養
  • 障害者控除
  • 医療費控除
  • 高額介護サービス費
  • 介護保険料
  • 施設の食費・居住費

など、利用できる制度がある可能性があります。

企業がすべてを判断する必要はありませんが、専門家や相談先につなぐことで、従業員の経済的不安を軽減できる可能性があります。

これは、一般的な両立支援制度だけではカバーしにくい支援の一つです。

5.ビジネスケアラー支援を進める5つのステップ

STEP1.経営課題として位置付ける

最初に、仕事と介護の両立を人事部門だけの問題にしないことが重要です。

経営層が、

「介護離職を防ぐ」

「中核人材を守る」

「従業員が安心して働き続けられる会社にする」

という方針を明確にします。

経済産業省の「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」でも、経営層のコミットメントを重要なステップとして位置付けています。

STEP2.従業員の実態を見える化する

次にアンケートなどを活用し、

現在介護している人

近い将来介護する可能性がある人

介護に不安を感じている人

を把握します。

同時に、社内制度の認知度や相談しやすさも確認します。

STEP3.不足している支援を整理する

実態が分かったら、

「制度はあるが知られていない」

「相談窓口がない」

「管理職が対応方法を知らない」

「介護に関する基礎知識が不足している」

など、自社に不足している支援を整理します。

STEP4.優先順位を決めて実施する

すべてを一度に実施する必要はありません。

例えば、

介護リテラシーが低い
→ 全従業員向けセミナー

相談しにくい
→ 相談窓口整備

管理職が対応できない
→ 管理職研修

介護費への不安が多い
→ お金に関する相談・情報提供

というように、課題に合わせて取り組みます。

STEP5.効果を確認して改善する

ビジネスケアラー支援も、実施して終わりではありません。

例えば、

  • 社内制度認知率
  • セミナー参加率
  • 相談窓口利用状況
  • 介護と仕事を両立できると感じる割合
  • プレゼンティーイズム
  • エンゲージメント
  • 介護による離職状況

などを確認します。

経済産業省のガイドラインでも、制度の利用実態や従業員満足度、エンゲージメント、仕事のパフォーマンスなどを効果検証の着眼点として挙げています。

6.ビジネスケアラー支援で大切なこと

6-1.介護休業の取得だけをゴールにしない

ビジネスケアラー支援の目的は、介護休業を取得する人を増やすことではありません。

本来の目的は、

従業員が仕事を続けながら、必要な介護体制を整えられること

です。

制度利用率だけを見るのではなく、仕事と介護を両立できているかを確認することが重要です。

6-2.介護が始まる前から支援する

介護が始まってから情報提供をしても、従業員には情報を調べる余裕がない場合があります。

親が元気なうちから、

「どこに相談するのか」

「会社にはどんな制度があるのか」

「家族で何を話しておくのか」

を知っておくことで、突然介護が始まった際の負担を軽減できます。

6-3.制度と同時に「相談できる風土」をつくる

制度が充実していても、従業員が相談できなければ利用されません。

ビジネスケアラー支援では、

制度

知識

相談体制

職場風土

をセットで考える必要があります。

FAQ

Q1.ビジネスケアラー支援とは何ですか?

仕事を続けながら家族の介護をしている従業員が、介護を理由に離職することなく仕事と介護を両立できるよう企業が支援する取り組みです。制度整備だけでなく、介護情報の提供、相談体制、管理職研修、柔軟な働き方なども含まれます。

Q2.企業はビジネスケアラー支援として何をすればよいですか?

まず従業員の介護実態や制度認知度を把握します。そのうえで、介護研修、相談窓口、管理職教育、両立支援制度、柔軟な働き方など、自社の課題に合わせた支援を行います。

Q3.2025年の育児・介護休業法改正で何が変わりましたか?

2025年4月から、介護離職防止に向けた雇用環境整備、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認、40歳等での早期情報提供などが事業主に義務付けられています。

Q4.中小企業でもビジネスケアラー支援は必要ですか?

はい。むしろ少人数の企業では、一人の管理職や熟練社員が介護によって十分に働けなくなることが、組織全体に大きく影響する場合があります。大規模な制度から始めるのではなく、研修や相談体制、制度周知などから取り組む方法があります。

Q5.ビジネスケアラー本人をどう把握すればよいですか?

従業員アンケートなどを活用する方法があります。ただし、介護はプライベートな情報でもあるため、個人を特定することを目的とせず、会社として必要な支援を把握するために実施することが重要です。

Q6.介護のお金に関する支援も企業が行う必要がありますか?

企業が税金や介護費について個別判断する必要はありません。ただし、介護費用への不安が仕事に影響することもあるため、制度に関する情報提供や専門家への相談機会を用意することは、仕事と介護の両立支援の一つとして考えられます。

まとめ

ビジネスケアラー支援は、介護休業制度を整備するだけでは十分ではありません。

重要なのは、

経営課題として位置付ける

従業員の介護実態を見える化する

介護リテラシーを高める

相談できる環境を整える

仕事を続けられる制度・働き方をつくる

効果を確認して改善する

という流れです。

特に、介護離職が起きてから対策するのではなく、介護に直面する前から従業員へ情報を届けることが重要です。

そして、介護による問題は「離職」だけではありません。

心身の疲労やストレス、仕事への集中力低下などによって、働きながらパフォーマンスが低下している可能性もあります。

ビジネスケアラー支援を、単なる福利厚生や法改正対応ではなく、人材定着・生産性向上・人的資本を守るための経営課題として考えることが求められています。

ビジネスケアラー対策を「制度を整えるだけ」で終わらせていませんか?

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