働きながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」が増加するなか、企業にとって従業員の離職や生産性の低下といった課題は深刻です。しかし、その対応策が明確でないまま放置されている企業も多いのが現状です。本記事では、「ビジネスケアラー支援」の視点から、企業がすぐに取り組める具体策を紹介。助成金の活用、制度整備、社内環境の見直しなど、人的資本経営の観点からも注目されるこのテーマを、実例を交えながらわかりやすく解説します。
目次
1. ビジネスケアラー支援が求められる背景
1-1 働きながら介護する人が増えている現実
少子高齢化が進む中で、働きながら介護を担う人、いわゆる「ビジネスケアラー」が急増しています。総務省の統計によれば、介護と仕事を両立している人は全国で約300万人に上り、その多くが40～50代の中核人材です。これは今後も増加することが予想されており、企業にとっては喫緊の課題といえます。
1-2 企業にとってのリスクと課題
ビジネスケアラーを支援しないことで生じる課題には、離職率の上昇、パフォーマンスの低下、職場のモチベーション低下などが挙げられます。人材流出による採用コスト増加など、経営にも大きな影響を与える可能性があります。これらのリスクは、表面化しにくいために放置されやすく、早期の対策が必要です。
2. 企業が取り組むべき制度的なビジネスケアラー支援
2-1 両立支援等助成金の活用法
厚生労働省が提供する「両立支援等助成金（介護離職防止支援コース）」は、ビジネスケアラー支援の導入を後押しする制度のひとつです。介護休業制度の整備や研修の実施などにより、助成金が支給されます。初期コストを抑えて制度を整備できるため、中小企業にも導入しやすい施策です。
2-2 就業規則への明記と周知の重要性
制度があっても、社員が知らなければ意味がありません。介護休暇や時短勤務制度を就業規則に記載し、定期的に説明会や社内報などで周知を徹底することが、ビジネスケアラー支援の第一歩となります。ポスター掲示や社内ポータルでの特集記事なども有効です。
3. 社員が相談しやすい職場環境の整備
3-1 上司や人事への相談ルートを明確にする
ビジネスケアラーは「迷惑をかけたくない」との心理から、悩みを抱え込んでしまう傾向があります。直属の上司や人事部門への相談ルートを明確にし、気軽に声を上げられる環境づくりが不可欠です。「誰に、どのように伝えればよいか」を社内で可視化することも重要です。
3-2 相談窓口の設置と外部専門家の活用
社内に相談窓口を設けるだけでなく、社会保険労務士やケアマネジャーなど外部専門家との連携も有効です。個別事情に応じたアドバイスが得られるため、支援の質が大きく向上します。従業員が匿名で相談できるチャットボットの導入も注目されています。
4. ビジネスケアラー支援を福利厚生として捉える
4-1 支援制度を“選ばれる企業”の武器に
優秀な人材ほど、職場に柔軟な制度や支援体制があるかを重視しています。ビジネスケアラー支援は、採用や定着率の向上、企業ブランディングにも直結します。実際に支援制度を導入した企業では、エンゲージメントの向上が報告されています。
4-2 メンタルケアも含めた包括的サポートを
介護との両立は、肉体的だけでなく精神的負担も大きく、メンタルヘルスへの配慮が欠かせません。EAP（従業員支援プログラム）を導入するなど、心身両面での支援体制を構築しましょう。管理職向けに「介護理解研修」を実施するのも効果的です。
5. ビジネスケアラー支援を実戦に移す社内推進のステップ
5-1 スモールスタートで制度を整える
いきなり全社導入を目指すのではなく、小規模な部署やモデルケースから始め、効果検証しながら段階的に展開するのが成功のポイントです。パイロット運用で得られた声をもとに制度をブラッシュアップしていきましょう。
5-2 ビジネスケアラー支援に向けた社内アンケートでニーズを把握
社員の声を拾うことが、継続的なビジネスケアラー支援の鍵です。定期的なアンケートを実施し、制度の認知度や利用状況、改善点を把握してPDCAを回しましょう。匿名での意見収集や自由記述欄を設けることで、より実情に即した対応が可能になります。
まとめ
本記事では、ビジネスケアラー支援の必要性と、企業が今すぐ始められる対応策を紹介しました。ビジネスケアラー支援は、従業員の離職防止や生産性向上、企業ブランドの強化にも直結します。まずは社内制度の見直しや相談窓口の設置から着手し、継続的なビジネスケアラー支援を実践していくことが、これからの人的資本経営の鍵となります。
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