働きながら家族の介護を担う“ビジネスケアラー”が急増しています。企業の中核人材である40〜60代に集中するこの層をどう支えるかが、企業の持続可能性を左右する時代です。2025年には育児・介護休業法の改正が施行され、企業には「ビジネスケアラー支援」への対応が義務化されます。
しかし、制度周知にとどまり、十分な支援体制が整っていない企業も少なくありません。
本記事では、法改正のポイントとビジネスケアラーサポートがもたらす経営的メリット、そして今企業が実行すべき具体策を分かりやすく解説します。
目次
1. ビジネスケアラーの急増と企業が抱える課題
1-1 家族介護の担い手は「現役世代」へ

日本は急速な高齢化が進み、2030年には約833万人が家族介護に関与すると見込まれています。そのうち4割は、まさに働き盛りのビジネスケアラー。企業にとっては重要な人材層のケアが経営課題となりつつあります。
1-2 相談できない・支援が届かない現実
ビジネスケアラー多くが「相談できる人がいない」状況であり、支援制度があっても利用しづらい、上司に話しにくいなど、職場での孤立が深刻化しています。
2. ビジネスケアラー支援の遅れが企業にもたらす損失
2-1 年間9兆円超の経済的損失
経済産業省によると、介護支援を行わない企業全体での経済的損失は年間9兆円以上。中小企業においても1社あたり平均773万円(100名規模)の損失が発生すると試算されています。
2-2 離職・生産性低下・職場環境悪化
介護を理由にした退職は採用・育成コストの浪費につながります。また、集中力の低下やプレゼンティーズムによって生産性も大きく損なわれます。支援体制が整っていない職場では、チームの士気や雰囲気も悪化しかねません。
3. 「ビジネスケアラーサポート」が企業にもたらす3つのメリット
3-1 優秀な人材の獲得と定着
介護支援制度の充実は、採用市場での大きな差別化要因に。仕事と介護を両立できる職場環境は、育児・介護世代の人材に選ばれやすくなり、離職防止にも効果的です。
3-2 企業ブランディングと人的資本経営の強化
「社員を大切にする会社」として社内外に発信することで、企業ブランドが向上。人的資本の情報開示が求められる今、ビジネスケアラー支援の有無が企業評価を左右する時代になっています。
4. 2025年法改正に伴う「企業の義務」とその対応策
4-1 法改正で義務化される4つの施策
2025年4月から、企業には次のうちいずれか1つ以上の対応が義務づけられます。
- 介護リテラシー向上研修の実施
- 相談窓口の設置
- 支援方針の社内周知
- 制度活用事例の共有
4-2 現実は「周知止まり」…差がつくのは実行力
多くの企業では「制度がある」ことの周知にとどまり、実際の活用促進や相談体制の整備までは進んでいません。だからこそ、研修や窓口設置など“本気の実行”が採用力や定着率、エンゲージメント向上に直結します。
5. いま企業が取り組むべきビジネスケアラー支援の実践例
5-1 「リテラシー向上」と「相談体制」の両軸強化
まずは従業員・管理職向けの研修からスタート。介護制度や控除制度の基本知識に加え、上司が部下を支えるための具体的対応力も重要です。
5-2 カスタマイズ支援でエンゲージメントを高める
ハンドレッドライフでは、企業の実情に応じたアンケート調査と分析に基づき、最適な「ビジネスケアラーサポート」を提案。研修+相談+支援策の導入により、従業員エンゲージメントを高め、離職を防ぎます。
まとめ:制度対応から戦略的活用へ。今こそ企業の本気が試される
介護と仕事の両立支援は、企業の競争力・ブランド・人材戦略の要となる時代です。法改正をきっかけに、義務対応で終わるのではなく「戦略的なビジネスケアラー支援」へと進化させましょう。今こそ、人的資本経営、ESG経営、DE&I推進の軸に“介護支援”を組み込むタイミングです。
<参考>ビジネスケアラーサポート研修
